とも座RS星の「光のエコー」現象:宇宙の距離を測る鍵

ハッブル宇宙望遠鏡が捉えた壮大な宇宙のライトショーが明らかに。40日周期で明滅を繰り返すとも座RS星が作り出す「光のエコー」現象は、宇宙の距離を測る重要な手がかりとなっています。

太陽の1万5千倍の輝きを放つ巨大な変光星

ハッブル宇宙望遠鏡によって撮影されたとも座RS星
Credit:NASA, ESA, and the Hubble Heritage Team (STScI/AURA)-Hubble/Europe Collaboration

ハッブル宇宙望遠鏡が捉えた、まるで宇宙の鼓動のような壮大な光の演出が話題を呼んでいます。NASAとESAが共同で観測したとも座RS星は、その周期的な明滅により、周囲の星間物質に幻想的な「光のエコー」を生み出しています。

とも座RS星は、太陽の10倍以上の質量を持ち、約15,000倍もの明るさで輝く巨大な変光星です。
地球からおよそ6,500光年離れた場所に位置するこの星は、セファイド型変光星と呼ばれる特殊な種類の星に分類されます。

恒星の晩年がもたらす劇的な光のショー

通常、恒星は一生の大半を安定した状態で過ごします。
しかし、核燃料である水素の大部分を消費すると、その様相は劇的に変化します。
とも座RS星の場合、約40日周期で明るさが5倍近く変動する脈動を始めます。

この星の特筆すべき点は、濃密なガスと塵からなる星雲に包まれていることです。
2010年、ハッブル望遠鏡は5週間にわたってこの星を観測し、その周期的な変化を捉えることに成功しました。
観測された「光のエコー」現象は、音が周囲の物体に反射して聞こえてくるエコーに似ています。
星が膨張して明るくなると、その光は周囲の塵とガスの殻に反射し、まるで物質が外側に広がっているかのような錯覚を引き起こします。

宇宙の距離を測る重要な「物差し」として

このような現象は視覚的な美しさだけでなく、重要な科学的意義も持っています。
セファイド型変光星の脈動周期は、その星の本質的な明るさと直接関係があり、これを利用して宇宙の距離を測定する「宇宙の物差し」として活用されています。
実際、とも座RS星の光のエコーを利用した距離測定は、セファイド型変光星としては最も精密な測定結果をもたらしました。

このような観測成果は、私たちの宇宙理解をさらに深める重要な手がかりとなっています。
とも座RS星は、宇宙の広大な規模を測定し理解する上で、科学者たちの貴重な研究対象となっているのです。


参考文献

星空案内人
宇宙の壮大な美しさを、背景の科学の面白さとともに誰もが理解できる言葉で伝えることを目指す科学ライター
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