プラネタリウム、100周年! ~聖地巡礼!?ドイツ博物館~

近代プラネタリウムは、1923年10月21日にドイツのミュンヘンにある「ドイツ博物館」で世界で初めて公開されました。そんなプラネタリウムの聖地とも言えるドイツ博物館では、2023年5月5日から2024年1月28日まで、プラネタリウム100周年記念特別展が開催されました。
今回はドイツ留学中のライター・松井が特別展へ潜入!その様子をドイツからお届けします。

ドイツ博物館

ドイツ博物館(Deutsches Museum)は南ドイツのミュンヘンに位置する、世界最大級の科学博物館です。

「プラネタリウム100周年」や「ドイツ博物館の歴史」の紹介記事はこちら↓

撮影場所:Deutsches Museum 撮影者:松井

ドイツ博物館は現在、オープンから100周年にあたる2025年に向けて大規模改修工事中です。
そのため、天文台など、残念ながら一部見学できないルートがあります(2024年1月現在)。
それでも日本では考えられない規模かつ充実した展示を誇る博物館です。
私も今回初めて足を運んで、工事中とは思えなかったです。1日ではとても見学しきれません。

宇宙関連の常設展示フロアの、ほんの一角。広すぎます。 
撮影場所:Deutsches Museum 撮影者:松井

ドイツ博物館の創設者であるオスカー・フォン・ミラー(Oskar von Miller)の
「偉大な芸術作品と同様に、自然科学の発展の歴史も人々に知ってもらい、後世に残すべきだ」
という言葉を現在もしっかりと継承する、ホンモノにこだわる博物館です。

特別展「プラネタリウムの100年」

広すぎて館内で迷子になりながら、特別展の会場を探して…ついに到着です!

常設のプラネタリウムドームは改修中のため入ることができませんでしたが、特別展の会場には仮設ドームが設置されていました。

仮設ドームとモニター。モニターには特別展のタイトル「プラネタリウムの100年」が映し出されています。 
撮影場所:Deutsches Museum 撮影者:松井

特別展会場に入ってすぐに見えてくる大きなドームは、圧巻でした。

さて、展示を見に行ってみます。

天球儀
撮影場所:Deutsches Museum 撮影者:松井

展示は主に、プラネタリウムの歴史を紹介する年表や天球儀、歴代のプラネタリウム投影機などが中心でした。
人々の考え方は、天動説から地動説へ。
まるで歴史を追体験するように展示を楽しむことができました。
そして、ドイツ博物館オープンに伴い2種類の”プラネタリウム”が制作されました。

地動説プラネタリウムの一部
撮影場所:Deutsches Museum 撮影者:松井
世界初の天動説プラネタリウム「Zeiss Model I」
撮影場所:Deutsches Museum 撮影者:松井

特に地動説プラネタリウムは、戦争で深刻な被害を受けてしまいましたがなんとか残存できた箇所は大切に保管され、今回の展示に至ったそうです。

土星の模型。激しい損傷が見られます
撮影場所:Deutsches Museum 撮影者:松井

天動説プラネタリウム Zeiss Model Iは、ドイツ博物館のシンボル的展示です。

Zeiss Model Iの恒星を映し出す「恒星球」の部分
撮影場所:Deutsches Museum 撮影者:松井

そして、ドイツ博物館やその近隣施設で活躍した歴代のプラネタリウム投影機たちもずらり。

Carl Zeiss社製・歴代のさまざまな投影機。写真左からModel IV、M1015、Model VII、ZKP 4と、順に新しいものとなっている
撮影場所:Deutsches Museum 撮影者:松井

写真1番左の「Zeiss Model IV」は、東京都のコスモプラネタリウム渋谷、愛知県の名古屋市科学館でも展示されております。
写真1番右の「SKYMASTER ZKP 4」は、香川県の高松市こども未来館、福岡県の宗像ユリックスプラネタリウムにて活躍中です。
生で見てみたい!という方は、お近くの施設にぜひ足を運んでみてくださいね。
さらにプラネタリウムドームの外周は、最新の天文学を紹介するコーナーになっていました。

仮設プラネタリウムドームの壁面には、天体写真がずらり。
撮影場所:Deutsches Museum 撮影者:松井

【最新の科学を伝える】

それは、近代プラネタリウムの大きな役割のひとつと言えるでしょう。
そんなプラネタリウムの重要な役割を象徴するような展示が、プラネタリウムドームの壁面にずらり。
まさに、1つのプラネタリウムを拠点にサイエンスのおもしろさがたくさんの人に広まっていくような印象を持てる…すばらしい展示でした。

特別展限定!プラネタリウム投影

プラネタリウム出口から撮影
撮影場所:Deutsches Museum 撮影者:松井

直径10mの仮設ドームへ入ると、
カールツァイス社の最新!光学式プラネタリウム投影機「ASTERION」とデジタル式投影機「VELVET LED」がお出迎え。

Carl Zeiss社(ドイツ)製・最新のプラネタリウム投影機。
撮影場所:Deutsches Museum 撮影者:松井

これまでに掲載したゴツゴツしたプラネタリウム投影機の印象とは異なり、シュッとしていますよね。
投影機の形の変化からも、技術の進化が手に取るように分かります。

プラネタリウムの投影内容は時間帯によって異なり、私は2日間で4回も観てしまいました。
中でも、専門の解説者さんがその場で解説してくださるライブプラネタリウムはなんと「恒星の視差」という難しいテーマ!
内容の難しさには驚きましたが、丁寧な解説に感激しました。

もちろん易しいテーマも用意されており、自分の好みや利用シーンに合わせて内容を選んでチケットを購入することができましたよ。

100周年、そして未来へ。

近代プラネタリウム初公開から100年。
今では世界中に4000を超えるプラネタリウム施設があります。

その全てのはじまりはここ、ドイツ博物館からです。

撮影場所:Deutsches Museum
撮影者:松井

100年の節目に生まれ変わる博物館の姿も、とっても楽しみですね。

プラネタリウムの本場・ドイツ博物館からお届けしました。


この記事はドイツ博物館にご協力いただき、掲載しています。

この場をお借りして深く御礼申し上げます。


この特別展はすでに終了しています。

参考文献:

・Deutsches Museum – Jubiläum mit Stern
https://www.deutsches-museum.de/museum/presse/meldung/jubilaeum-mit-stern

名古屋大学大学院 博士後期課程2年
愛知県豊橋市出身。プラネタリウム好きが高じて、現在、ドイツのRuhr University Bochum / Zeiss Planetarium Bochumに「プラネタリウム留学」中。専門は銀河進化学、天文教育普及学。
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